「あの人は頭いいな」と感じる人の特徴の一つに、「具体と抽象の往復」が上手いという点があります。
この「具体と抽象の往復」について、今回はビジネスシーンを例に解説していきます。
具体と抽象とは何か?
「具体」と「抽象」とは、簡単に言えば、
- 具体: 詳しい情報、具体的な例や行動
- 抽象: ざっくりとした情報、概念や全体像
を表す言葉です。
例えば、「中華料理」と「チャーハン」の関係で考えると、「チャーハン」は「中華料理」の中の具体的な料理の一つです。
つまり、「チャーハン」を抽象化すると「中華料理」になり、「中華料理」を具体化すると「チャーハン」を含む様々な料理が出てきます。
ビジネスシーンにおける具体と抽象
ビジネスシーンにおいても、この「具体」と「抽象」の使い分けは重要です。
例えば、上司から「来週の接待、いい感じのお店予約しといて」と指示されたとします。これは抽象的な指示です。
一方、「来週の接待は、得意先A社の社長さん含め3名で、みなとやの1万5千円のコース、席は窓際の個室で、2次会はこのお店で、手土産はこれにして」という指示であれば、これは具体的な指示になります。
具体的な指示の方が、指示を受けた側にとっては行動に移しやすく、ミスも減るため、多くのビジネスパーソンは具体的な指示を好みます。
具体と抽象の往復ができない人の特徴
「具体」と「抽象」どちらかに偏った思考をしてしまうと、仕事で様々な問題が発生する可能性があります。
【具体病】具体的なことばかり考えてしまう
若手ビジネスパーソンに多いのが、具体的に指示されたことしかやらない、具体病です。
具体的な指示はミスを減らすというメリットがある一方、指示されたこと以外に対応できない、指示がないと行動できないというデメリットがあります。
【抽象病】抽象的なことばかり考えてしまう
管理職など、お偉いさんに多いのが、抽象的なことばかり考えてしまい、具体的な行動に移せない抽象病です。
「ベストを尽くします」「徹底的に強化します」といった、一見立派に聞こえる抽象的な言葉を多用するものの、具体的に何をすれば良いのかが明確になっておらず、仕事がなかなか進まないという状況に陥りがちです。
「具体と抽象の往復」を実践する2つのポイント
「具体病」と「抽象病」どちらにも陥らず、バランスの取れた思考をするために、以下の2点を意識しましょう。
他人ばかり抽象化するな
人はどうしても、自分自身のことは具体的に捉えがちですが、他人や他の部署のこととなると、抽象的に捉えがちです。
例えば、「営業部はこう考えていると思いますが…」など、ひとまとめに抽象化してしまうと、誤解や反感を買う可能性があります。
相手やその状況をよく理解し、安易に抽象化し過ぎないように注意することが大切です。
本質マンに騙されるな
「本質」や「真髄」など、深遠で重要な意味を持つ言葉を多用する人は、一見、頭が良さそうに見えます。
しかし、実際には、具体的な内容が伴っていない、単なるポジショントークである場合も多いので、注意が必要です。
特に、自分自身が「本質」という言葉を使う場合は、誰にとっての本質なのかを明確にする必要があります。
練習問題
「具体と抽象の往復」の理解を深めるための練習問題です。ぜひチャレンジしてみてください。
問題:「成功」と「失敗」を抽象化して、一緒だと表現してみましょう。
解答例:成功と失敗は、抽象化すると、「行動した」という意味では一緒です。
問題:「愛」と「憎しみ」を抽象化して、一緒だと表現してみましょう。
解答例:愛と憎しみは、抽象化すると、「対象に執着している」という意味では一緒です。
問題:5億円の資産がある人と5億円の借金がある人を抽象化して、無理やり一緒だと表現してみましょう。
解答例:5億円の資産がある人と5億円の借金がある人は、抽象化すると、「稼ぐポテンシャルがある」という意味では一緒です。
問題:「写真が0円になった」ということは、今後、何が0円になるのでしょうか?
解答例:写真が0円になったということは、AIツールによって、これまで新入社員が行なっていたような事務作業のコストが限りなく0円に近づいていくと考えられます。
まとめ
「具体と抽象の往復」は、ビジネスパーソンとして必須のスキルです。
意識的に練習を重ねることで、このスキルを身につけていきましょう。
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